ヴィクトリア時代の台所~19世紀英国の料理本を読む~

19世紀に書かれたイギリス料理の本を拾い読みしながら、当時の暮らしに思いを巡らせてみるブログです。

涼しげな Water Ice (ウォーターアイス)

8月に入ったとはいえ、雨続きで朝晩は冷え込み、まったく夏らしくないイギリスですが、夏のデザートの続きを…。

冷たいデザートの章には、アイスクリームに続いて Water Ice (ウォーターアイス) なるものがいろいろと掲載されています。"Water Ice" という言葉を聞いたことがなかったのですが、本の解説によると、

ウォーターアイスは、濃厚でクリーミーなアイスクリームとは異なり、水と味を付けた果物のみで作る

と記述されています。つまり、シャーベットのことですね。現在のイギリスでは、一般的にシャーベットは "sorbet" と言います (ちなみに、リーダーズ英和辞典には water ice が載っていました。さすがです)。

今日は、このウォーターアイスのレシピを読んでみたいと思います。桃、イチゴ、ラズベリー、メロンのほか、レモン、オレンジ、パイナップル、チェリー、ぶどう、アプリコット、しょうがなど、さまざまなフレーバーのシャーベットが載っています。基本的に材料は「メインのフルーツ、レモン、clarified sugar (後述)、水」ですが、着色料などを加える場合もあります。

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ところで、この "clarified sugar" とは何でしょうか? "clarify" には "澄ませる" という意味があり、この場合は、透明なシロップを作ることではないかと思います。 

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<シロップの作り方>
12ポンドの砂糖、12パイントの水に、よくかき混ぜた卵白1/2個を加え、10分間沸騰させる。これを、ウォーターアイスのすべてのレシピで使用する。

詳しくは知りませんが、卵白にはアクや不純物を取り除く作用があるようです。多分、シロップが出来上がったら、濾したのだろうと思います。
では、実際にレシピを一つ読んでみましょう。

<イチゴのウォーターアイス>
1かごのイチゴ、レモン2個分のジュース、1/2パイントの水、1パイントのシロップ、着色料少々。凍らせる。1クォート分。

凍らせる際には、前に紹介した製氷機を使います。イチゴは製氷機の中でつぶれるか、凍らせる前につぶすかしていると推測します。 

ところで、イチゴやラズベリーはイギリスでも育ちますが、この時代にレモンやオレンジ、パイナップルなど南国のフルーツはどこから調達されていたのかが気になるところです。それはまた、別の機会に調べてみたいと思います。