ヴィクトリア時代の台所~19世紀英国の料理本を読む~

19世紀に書かれたイギリス料理の本を拾い読みしながら、当時の暮らしに思いを巡らせてみるブログです。

意外と米も食べられていた? 米を使ったパンやお菓子

前回はカレーの話でしたが、カレーといえば当然ご飯と一緒に食べるわけで、それなら米も普通にあったのだろうな? ということで今回はお米のレシピをいくつか見てみました。「現在のイギリス料理で米を使ったレシピは何か?」と聞かれると、ライスプディングぐらいしか思いつかないのですが、この本の目次を見ると、それ以外にも rice pancakes (米のパンケーキ)、rice cheesecake (米のチーズケーキ⁉)、 rice meringue (米のメレンゲ??) など、お米を使ったお菓子のレシピがいくつか載っていました。

その中でも、ちょっと予想外の使い方だと思ったのが、rice bread (米のパン) なるものです。 

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Rice Bread (米のパン)
<材料>
米1.25ポンド、軟水10クォート、German イースト2オンス、小麦粉15ポンド
<作り方>(要約)
1. パトナ米を軟水で30分以上茹で、粗目のふるいで裏ごしする
2. 小麦粉と 1 を混ぜ、German イーストを使って普通にパンを作るのと同じ要領でパンを作る
* 26~28ポンドのとても白いパンができる。1週間まで日持ちする。

Patna rice はインド産のロンググレイン米。わざわざ soft water で茹でると書いてあるのが興味深いです。全粒の米ではなく米粉を使った場合は、それほど上手くできないとも。German イーストは生イーストなのか乾燥イーストなのか 、よくわかりませんでした。他のレシピでは「dried German yeast」と書いてあるものもあるため、ここでは生イーストなのかもしれませんが、不明です。当時の人は、これだけ読めばわかったのかもしれませんが。

もう一つ意外だったのが、こちら。なんと、この時代に既にタピオカまでイギリスに入ってきていたのですね。 

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Rice and Tapioca Pudding (米とタピオカのプディング)
<材料>
牛乳: 3パイント、米とタピオカ: ティーカップ1杯分、その半量の砂糖、シナモン少々
<作り方>

米とタピオカ(米を多めにする、割れるので洗わない)を混ぜたもの、その半量の砂糖、冷たい牛乳3パイントを深皿に入れ、シナモン少々をふりかけ、低温のオーブンで焼く。

ライスプディングにタピオカが少し混ぜてある感じでしょうかね。米と牛乳という組み合わせがどうも苦手なので、ライスプディングは数えるほどしか食べたことがない(そして今後も食べることはないと思う)ですが、タピオカを入れるとまた一味違うのかもしれませんね。

その他にも、米粉を使ったお菓子もいくつか掲載されています。たとえば、こちら。

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Rice Jelly (米のゼリー)
<材料>
米粉1/2パイント、型を満たす分量の水かクリーム、レモンの皮1個分、シュガーローフ2オンス、クルミ大のバター、濁りを除去したアイシングラス2オンス
<作り方>
1. 米粉1/2パイントに、型を満たす分量の水またはクリームを加える
2. 砂糖にレモンの皮を擦り付ける
3. バターを加え、火にかけ、かき混ぜながら5分煮る
4. アイシングラス1/2オンスを加える
5. 氷の上に乗せた (または地下室の床に置いた) 型に 4 を入れ、冷やす
6. テーブルへ運ぶ際に、溶かしたカラントゼリーやシロップを周囲に注いでも良い

アイシングラスというのは「魚の浮き袋を原料として抽出されたゼラチン」だそうです(ウィキペディアより)。濁りを除去する方法は、こちらのサイトをご覧ください↓
To Clarify Isinglass ~ thecooksguide.com

Rice jelly はどれほど人気があったのか、気になるところです。ちなみに rice jelly で検索するとういろうの写真がたくさん出てきました。私はこっちの方がいいな(笑)。