ヴィクトリア時代の台所~19世紀英国の料理本を読む~

19世紀に書かれたイギリス料理の本を拾い読みしながら、当時の暮らしに思いを巡らせてみるブログです。

9月が旬の食材

9月に入り、すっかり秋らしくなってきました。というよりも、秋を通り越して冬になりそうな気配の肌寒い天気が続いています。じめじめして寒い。そろそろ冬物を出さなければ…。

さて、今回は「The Cook's Calendar」という章を見てみます。ここには毎月の旬の食材が分類ごとに記載されています。9月の食材を見ると、野菜や果物には現在でもお馴染みのものが並んでいますが、肉類と魚類には普通のスーパーでは見かけないものが多いようです。特にゲーム類ですが、でもまあ、ハンティングに出掛ける人々の間では、今でも普通に食されているのかもしれませんね (そんな上流階級の知り合いはいないのでよくわかりませんが)。 

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9月の食材。肉、魚、野菜、果物に分類された毎月の旬の食材が記載されている。

これは珍しいかなと思ったものや、単語を知らなかったものを挙げてみます。

<肉類>
・buck venison 牡鹿(牡鹿は7~9月、女鹿 (doe vesnison) は10~1月の食材と分けられているところが興味深い)
・green geese ガチョウのひな
・lark 雲雀
・leveret 子ウサギ
・moor game (red grouse (アカライチョウ) や ptarmigan (ターミガン) など)
・plover 千鳥
・teal コガモ
・wheatear サバクヒタキ

<魚類>
・barbel バーベル (ヨーロッパ産のコイ科の淡水魚)
・conger eel 穴子
・dace デイス (コイ科の魚)
・flounder ヒラメ、カレイなど
・gurnet ほうぼう
・perch パーチ
・pike パイク
・tench テンチ
・whiting ホワイティング

<果物>
・filbert ヘーゼルナッツ
・medlar セイヨウカリン

デイス、パーチ、テンチ…? 私が知らないだけかもしれませんが、聞いたことのない魚が多いです。今よりも魚の種類が豊富だったようですね。実際にこれらの魚がどれくらいの頻度で食されていたのか、すべてが入手可能だったのか、それとも「珍味」だったのか、など色々と考えてしまいます。ちなみに、今月が特に旬という dace のレシピは、目次を見る限りでは載っていないようです。パーチ、パイク、テンチはいくつかレシピがありました。

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魚料理の挿絵。なかなか豪快な盛り付けだったよう。

今月が特に旬なのは、デイス、牡蠣、パーチ、パイク、雷鳥、野ウサギ、moor game、ヤマウズラ、鴨、ぶどう、パイナップル、だそうです。

そういえば、Audley End House を訪れたときに、ぶどう栽培用の温室があったのを思い出しました。大きなお屋敷では、こんな風に自家栽培していたのでしょうね。

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Audley End House の温室。根は外に植えてあるのに注目(筆者撮影)。

お読みいただき、ありがとうございました。
それでは、また次回!