ヴィクトリア時代の台所~19世紀英国の料理本を読む~

19世紀に書かれたイギリス料理の本を拾い読みしながら、当時の暮らしに思いを巡らせてみるブログです。

本を修復してもらうことになりました

本題から外れますが、実は本を修復してもらうことになり、先日ブックバインダーの方にお会いして預けてきました。今回は、その時の話です。

丁寧に扱っていたつもりなんですが、なんと本の背表紙が半分はがれてしまいました。見開きにしたまま置いていたのが良くなかったようです (反省)。

すでに外れてしまったページも数枚あり、背表紙も本体から取れかけていたので、以前から修復してもらった方がいいかなと考えてはいました。そこで、8月の私の誕生日プレゼントとして、夫がブックバインダーへ見積もりを依頼し、手配してくれることになりました。

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そんな訳で先週、サリー州にあるブックバインダーさんのご自宅兼ワークショップを訪問してきました。

可愛らしいコテージのドアを開けて私たちを出迎えてくれたのは、ブックアーティストとして25年以上ご活躍されている、メグ・グリーンさん。オーダーメイドでの装丁やアート作品としての製本を手掛けらるほか、古書の修復も請け負われています。

早速ワークショップに案内され、本を手渡すと、メグさんが「あら、これと同じ本のもっと古い版を最近修復したところよ!」と言ってご自分のウェブサイトを見せてくれました。えええ!? すごい偶然に舞い上がる私たち。いくつかのブックバインダーの候補から、この方を選んで正解だった!

そして、さらに本を注意深ーく見ながら、色々と説明してくれたので、この本についてもう少し詳しく知ることができました。

  • 背表紙のフォントが前に修復した版 (おそらく1871年版?) に比べるとモダンな感じなので、この本は19世紀の終わりの方か、もしかすると20世紀初めの出版と思われる。
  • 出版年が記載されていないのは「常に重版されている状態だったから」だそう。当時は大ベストセラーだった本では、よくあることだったらしい。
  • 質感から、gelatinised paper (ゼラチンでコートされた紙) と思われる。よって、印字がより繊細でくっきりとしている (つまり、思っているよりも新しい本かもしれない)。
  • 背表紙はごく薄い革、表紙は厚紙にエンボス加工した薄紙を張って皮っぽくしている。
  • 糊は動物由来のため、その成分から紙が浸食されている。表紙は表面の紙をはがして新しい厚紙に貼りなおさないといけないと思う。
  • 本を綴じるのに糸ではなくリネンとステープルが使われているので錆が紙を侵食している。

…などなど。紙の種類から製本技術、歴史的背景にいたるまで幅広い専門知識をお持ちの方で、詳しく説明してくださいました。話を聞きながら、どのように作業するかを相談し、「できるだけオリジナルの部分を残しながら修復し、ステープルは取り外して絹糸で綴じる」ということになりました。とてもお忙しいようで、スケジュールがクリスマスまで埋まっているけれども、なんとか11月中ぐらいには仕上げていただけるとのことでした。

メグさんの作品にご関心のある方は、こちらからご覧いただけます。

Book Arts and Artist Books with Some Odd Pages

"REPAIRS" のページには、修復されたこの本より古い版の写真もあります。

Book Repairs, leather binding, book restoration and rebinding

以前はワークショップも開催されていたそうですが、最近は忙しくて無理なんだそう。予約リストがちらっと見えましたが、依頼はとても多いみたいです。でも、目が疲れるし、けっこう体力もいるので、年を取ると作業を続けるのが難しくなる、だんだんとブックバインダーの数も減っている、とおっしゃっていました。残念なことです。

ご自宅のいたるところに本棚があり、読書家でもあるのが伺えました。本を読むだけでなく、本そのものを愛されている方なのだなあ、と。どんな風に仕上げていただけるのか、楽しみにしています。

というわけで、本が手元にないのですが、写真をたくさん撮っておいたので当分はそれを元にブログを更新していく予定です。