ヴィクトリア時代の台所~19世紀英国の料理本を読む~

19世紀に書かれたイギリス料理の本を拾い読みしながら、当時の暮らしに思いを巡らせてみるブログです。

Damson Cheese (ダムゾンのチーズ)

夏から秋にかけては、ベリー類やスモモ類の収穫の季節。ジャムやプリザーブ作りが趣味の方も多くいらっしゃると思います。

ふと、Damson Cheese (ダムゾンのチーズ) というレシピが目に付いたので、ご紹介したいと思います。西洋スモモと訳されるダムゾンは、紫色の小ぶりのプラムのようなフルーツです。生で食べるよりも、砂糖で煮たりジャムにして食べるのが一般的です。

それをどうやってチーズに? と思ったのですが... レシピをよく読んでみると乳製品は一切入っていません。

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どうやら、fruit cheese (フルーツチーズ) というのは、いわゆるチーズではなく、フルーツを砂糖で煮詰めて固めたもので、ジャムをもっと固くしたゼリー状の保存食みたいです。

<作り方>
1. 完熟したダムゾンを jar に入れ、ダムゾン1クォートに対して1/4ポンドの砂糖を入れる
2. 柔らかくなるまでオーブンで焼き、裏ごしする
3. 2. の重量1ポンドに対して1/2ポンドの砂糖を加え、かき混ぜながら弱火で煮る
4. 型に流し込み、brandy paper をかぶせて紐で縛り、湿気のない場所に置く
5. 3~4か月後から食べられる
他のフルーツでも同様にチーズを作ることができるが、グリーンゲージを使う場合は砂糖を控える

ざっと訳すとこんな感じです。ここで、"jar" が実際にどのようなものなのかよくわからないのですが、次に続くレシピでは "stone jar" とあるので、そのことかと推測します (しかし、オーブンに入れるものなのか?謎です)。"brandy paper" は現時点で調べがついていませんが、ジャムのレシピでも使用されているので、おそらく蓋に使用する紙の種類だと思いますが、詳細は不明です。 

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Audley End Estate のキッチンにあった保存食の容器 (筆者撮影)

どのように食べるのかまではこの本からはわかりませんが、"damson cheese" で画像検索するとチーズやクラッカーに添えている写真が多く見つかりました。濃厚で美味しそうです。