ヴィクトリア時代の台所~19世紀英国の料理本を読む~

19世紀に書かれたイギリス料理の本を拾い読みしながら、当時の暮らしに思いを巡らせてみるブログです。

19世紀末にも冷蔵庫があった? Cabinet Refrigerator の話

イギリスの夏といえば、比較的涼しく爽やかな印象がありますが、この数年は真夏日が続くことが多く、日中は外出をためらうほどです。とにかく日差しが強くて暑い。そのうえ湿気が少ないので、カラカラに乾いて干物になりそうです(笑)。 

今ほどではないにせよ、昔も夏は暑かったはず。では、まだ冷蔵庫がなかった時代には、どのように食料品を保管していたのでしょうか。 

本によると、Cabinet Refrigerator (Ice Safeともいう) というものが存在していたようです。外観はおそらく木製の普通のキャビネットですが、中には氷を入れる場所と食料品を置く棚があり、内部の表面には金属の板のようなものが張られていたようです。この本で紹介されているのは当時新発明の「Self-feeding」タイプで、氷が常にキャビネット内部の壁に接触しているため、低温状態を保つことができる仕組みだそうです。 

<図 1>

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A. ホッパー (hopper) とよばれる氷を入れる場所
B. 徐々に溶けた氷が落ち込むV字型のくぼみ
C. 冷水用タンク (見えにくいですが、天板の左上コーナーにあります)
D. 食料品などを置く棚

<図 2>

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溶けた氷は金属製の底に溜まるようになっている。
詳しくは書かれていないが、換気装置も備わっていたらしい。

 この「画期的な」発明によって、数日間は低温を保つことができたようです。中の温度は「最低温度は32°(0℃)、各棚の温度は約40°(4.4℃)に保たれる」との記述があります。現在の冷蔵庫でも5℃ぐらいなので、機能的にはなかなか優れていたのではないでしょうか。 

夏でもアイスクリームやシャーベットなど冷たいデザートを作ることができたようです。これらのレシピも順次ご紹介していきたいと思います。